岩崎淑著「ピアニストの毎日の基礎練習帳」との出会い その2

 本書の前書きにあたる「はじめに」から、目が釘付けになった部分を引用させていただく。

 私はピアニストとして、長年にわたって、ステージでの演奏を続けてきました。毎日が忙しく、演奏旅行で出かけることも多いので、まとまった練習時間はなかなかとれません。でも、こまぎれの短い時間でも、効率の良い練習ができるよう、自分なりの工夫を重ねてきました。
 「たとえ15分しかなかったとしても、これさえやっておけば指は動く。安心して本番のステージに立てる」。
 プロとして活動している演奏家たちは皆、そんな自分なりの練習方法を確立しています。
 
 自分が仮に、いくらかでもクラシックのピアノ演奏について門外漢であったのなら、きわめてまっとうな話であるが、長年、レッスンについたり、ステージに立ったりして、自分なりのピアノの練習ということに対するイメージが凝り固まってしまった身にとってはまるで魔法のような言葉に思った。以下、自分の中で思考停止に至っていた、ピアノの練習についてのイメージ。


 ・有効な練習は分単位ではなく時間単位
 ・有効なメカニックな練習はショパンエチュード程度以上
 ・リヒテルの練習は曲をまるまる一曲、通す、というもの


 自分で自分を振り返って、とんでもないなあ、と思う。まあ、そりゃそうなんだけど、これじゃあ。

 さらに、
 ・世の中には(というか、かなり昔の話になるが、かつては身近に)オーケストラスコアを所見でピアノで弾ける人もいる。
 ・曲をさらうときは完全に暗譜するまで、音に出してさらってはいけない、という人もいる。それを実行できる人もいる。
 ・世の中には(というか、かなり昔の話になるが、かつては身近に)ほとんどのピアノの楽譜は所見でいけるという人もいる。

 さらに、
 ・練習時間がなくなれば、指がうごかなくなり、下手になる。
 ・下手になりたくなければ、時間をかけて練習するしかない。
 ・鍵盤に触るときはいつでも、リハビリテーション気分。
 
 さらに、
 ・心がけている基礎練習は、かつてはハノンの1番から20番+全調スケールで、20分程度。
 ・最近は、全調スケール。
 ・こころがけている基礎練習の効果が実感できない。指が動かなくなることの防止程度?逆に、こんな練習してたら、リズムが転びやすくなる感じもする。これでいいのか?

 項目を挙げていくとすごいわ、このオレの状態。先に引用した、岩崎淑氏の言葉は、これらの全部のことを簡単にひっくり返す、テコのきっかけ、打たれた楔、としては十二分なものであった。(もうすこし、続きそうです、この話、よって、つづく)